著者 : 佐藤 洋一
みなさん、こんにちは。東洋大学経営学部で教鞭をとっております佐藤洋一と申します。英語のビジネスコミニケーションの研究を専門としています。この連載コラムでは、数回にわたって、英語のビジネスコミニケーション、そして付随する企業研修、及びグローバル人材育成開発テーマについてお話をしていきたいと思います。
記念すべき連載第1回目となる今回は、「企業研修」についてお話をさせてもらいたいと思います。この、企業研修と言う言葉、もしかしたらあまりなじみのない方もおられるかもしれません。
企業はそれぞれ独自の人材育成システムを持っています。企業の人材育成における第一の目的は、ビジネスパーソンが、業務遂行に必要なスキルをしっかり身につけて、生産性を上げてもらうことにあります。
そして、日本企業の多くでは、この人材育成がその企業における福利厚生の一部として位置づけられており、これは世界的にも大変珍しいシステムだと言われています。
わたしは、現職につく前に、この企業における企業研修、とりわけグローバル人材育成の一環としてのビジネス英語教育を生業としていました。
現在、多くの企業で、グローバルに活躍できる人材の育成を目的として、英語教育を導入しています。2012年にリクルートが行った調査では、日本の大企業はもちろんのこと、中小企業においても約77%の企業が、英語のトレーニングや異文化適応能力研修などを含む、
グローバル人材育成のための企業研修が行っています。オリンピックまで残すところあと1年。このようなグローバル人材育成を実施している企業はさらに増えている事でしょう。
このような企業研修の話を大学の授業ですると、多くの大学生からは、「え、大学を卒業してもまだ授業を受けさせられることがあるのですか?」と驚きの声が聞かれます。
ですが、変化の激しい現代社会において、多様化するニーズに応えていくためには、日々新しいことを学習し、利用していくことが必須といえます。
よって企業でも、学校で受ける授業とは形は違えど、従業員の能力開発を何らかの形で「教育」している、というわけです。
現実の企業英語研修
さて、企業英語研修というのは、一般的にどのような形で行われているのでしょうか?
多くの企業では、ビジョンや事業目標に合わせて、基本的な英会話レッスンだけでなく、ビジネス英会話、Eメール、電話、ミーティング、プレゼンの英語、交渉のための英語、TOEIC対策講座など、学習者のニーズに合わせて様々な形での企業研修が行われています。
例えば、楽天やホンダが行って話題になった「社内英語公用語化」。これには、会社の中で英語が使える企業言語インフラを整備させていくと言う思惑があり、このような観点から見れば、このような社内英語公用語化も、企業英語研修の一貫であると指摘する識者もいます。
今後さらにグローバル化が加速すると予測されている日本社会では、このような企業英語研修のあり方もその時代のニーズに合わせて変わっていくことが予想されています。 この連載コラムでは、数回に分けてこの企業英語研修と言う観点から、日本社会の今後のグローバル化について、検討していきたいと思います。